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ことばの熱量

スイスで学校閉鎖が行われてからちょうど1週間が経った。

先週金曜日、教室に学長がやって来て「スイス政府が閉鎖を発表した。6時までに全員音楽学校から退出しなければならない」と告げられた。あわてて残りの生徒に連絡を取り、学校を出た。

それから一週間。建物自体は閉鎖したがレッスンは続行することが決まり、具体的な方法は自由に決めてよいとされたので、自分が考えたアイデアと今後の流れを生徒に一斉メールしたあと、一人ずつ生徒(のご両親)に電話をかけていった。

私にとって「電話」はけっこう勇気が要る。相手の顔が見えないし、自分のドイツ語がどれだけ理解されるか不安になる(普段生徒が私を理解してくれているのは、彼らの素晴らしいイマジネーションとギターのおかげだと思っている)。でもこの状況でそんなこと言ってられないのでとにかくかけていった。 「Wie geht es Ihnen?(お元気ですか?)」という普段から使う挨拶の言葉が、今あいさつ以上の意味を持っていることに私も相手の方もなんだかおかしくて笑ってしまった。「いやぁおかげさまで元気ですよ!」「メール読みました。いいアイデアですね」「先生も大変だと思いますが頑張って下さい」と、皆すごくポジティブに対応してくれた。ほんとにちいさな言葉なのだけれど、それぞれに「ことばの熱量」のようなものを感じて、胸が熱くなった。

それからは家でビデオを作ったり、ネットレッスンの準備等で毎日が過ぎていった。ビデオはレベル別に課題曲を提示して演奏、ステップごとに解説したごく短い映像を数本作り、生徒たちに好きな曲を選ぶようメールで送った。同じ空気を共有できない「映像」は、集中して観られる時間が限られている。必要最低限の情報をいかにわかりやすく伝えていくのか、様々な方のビデオを観て勉強させていただいた(←必要に迫られないとやらない自分はこんなことがなかったらずっと勉強しなかったんじゃないかと思う)。あと、映像を観ることで自分自身についても 色々気づかされた(あーまた余計なこと言ってるよ私!とか、もっとドイツ語の発音気をつけなきゃ汗、とか笑)。 ときどき外から見るのって大事だな、と思った。

来週からネットレッスンが始まる。いろいろ限界はあるが、自分が今いる状況での最善策を考えていこうと思う。