BLOG


瞳をひらいて聴く

また通奏低音についてリュートの今村泰典先生にご教授頂いている。この春ヘンデルのドイツアリア「Meine Seele hört im Sehen(私の魂は瞳をひらいて聴く)」(HWV207)という曲 を歌とフルートとギターで演奏するため、通奏低音のリアリゼーションが必要になったからだ。はじめてタイトルを見たとき、なんてすてきな言葉だ、と思った。そしてその曲はさらに素敵だった。

この曲は春の歌だ。大地に溢れるすべてのものが春の訪れを喜び笑っている、そしてその目に見える自然の「ことば」をいま私の心は聴いている、という意味の詩が歌われる。これは是非とも演奏したい、と思った。

今回は歌とフルートが入っているのでリアリゼーションはわりとシンプルになるはずなのだが、それでも何日もかかってようやく完成させ、PCの浄書アプリで清書したデータを先生に添削していただくべくメールでお送りした。きっとまた間違いだらけで赤(ミスのある部分は赤い文字や音符でご指摘頂いている)がいっぱい入って返ってくるんだろうな・・・汗、とか考えていると、ものの数時間で(!)先生は返信して下さった。データを開いて、びっくりした。それは、「白」かった。

7ページぶん(歌もフルートもあるから長くなる)の楽譜に、赤が「2つしか」なかったのだ。一瞬自分の目を疑った。そして、あまりの嬉しさに胸がいっぱいになり(これは自分にとっては今までの中で最高記録だった笑)、なので記念にその「白い楽譜」の写真を撮った。それくらい、嬉しかった。

もちろんこれで作業が終わるわけでは到底ない。いま楽譜が「白い」のは、あくまで「ハーモニーは合っている」というだけのことで、これから細かいディテールについて検討していかなければならない。私はようやくその作業のスタートラインに立っただけだ。それでもやっぱり嬉しかった。

今朝のスイスの気温はマイナス4度だった。外はまだ寒い。ただ、陽射しは明るく気持ち良い。よくわからないけれど、自然というものは見えなくてもずっと何かの準備をしているらしい。私も準備をしなくてはいけない。春が来るのだから。

 

春のコンサート情報 ※新コロナウイルスの影響により中止となりました。誠に申し訳ございません。 

 

3月26日(木)

Ensemble „B“ 室内楽コンサートMuseum Kleines Klingental, Basel

 

4月15日(水)

吉岡次郎室内楽シリーズV 「アンサンブル・バジリア〜吟遊詩人の歌〜」

19時開演、杉並公会堂小ホール

 

お問合せ:03−4477−5654(T&N企画)