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音だけきいたら

スイス建国記念日の音楽のお祭りで演奏することになった。ツーク(Zug)という街の企画で、街中の様々な場所で音楽を演奏してお祝いするらしい。「何を演奏しても良いけれど1曲だけスイスの曲を演奏して欲しい」という条件だったので、スイス国歌を歌とギター用にアレンジすることにした。スイスの国歌にはもともと多声的な楽譜があり、そのまま演奏してもキレイなのだが、今回はせっかくなので「クラシックギターで伴奏するならこう弾くよ」というアレンジにした。ザ・クラシックギターな奏法を入れた「国歌」はオリジナルとは少し毛色が違うが、弾いていて楽しい。

正直自分が外国の国歌を伴奏することになるとは思わなかった。でもこれも何かの縁なので、この国の国歌について少し調べてみることにした。公用語が4つあるスイスでは国歌のメロディは1つだが、歌詞は言語ごとに4バージョンある。つまり、音は同じだがみんな全然違う言葉で歌うのだ。そもそもスイスでは自分たちの国の呼び名でさえ地域ごとに違った言い方をする(スイスSuisseはフランス語圏での呼び名、ドイツ語圏ではシュヴァイツSchweiz、イタリア語圏ではスヴィッツェーラSvizzerra、ロマンシュ語圏ではシュヴィツラSvizra)。なので当然といえば当然なのだろうが、面白いな、と思った。もしかしたらこの国の人たちは歌詞の「言葉」ではなく、メロディの「音」を聴くことで自分たちの国歌だということをお互いに感じ合うのかもしれない。

さて、今回の演奏のために即席でデュオ名が必要になった。二人とも日本人なので日本語の名前にしよう、ということになり、あれこれ言葉を探した。そして、それぞれの単語が現地の人にはどうきこえるのかを知るために、「日本語のわからないスイス人(=夫)」に「音だけ聞いたとき、どのコトバが良いと思う?」ときいてみた。けっこうお洒落なかっこいい言葉もあったのだが、彼が最終的に選んだのは「トモ(Tomo)」と「キノコ(Kinoko)」だった。やっぱりガイジンの感覚はわからないわと思いつつ、名前はDuo Tomoにした。


 1. Augst Feier in der Stadt Zug

https://www.zug-tourismus.ch/de/aktuell/1-august-feier