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Summer Valentine (サマー・ヴァレンタイン)

ハーモニカ世界チャンピオンの大竹英二さんと、詩画家のほんまちひろさんと私の3人で「サマー・ヴァレンタイン」という動画を作った。

この曲はもともと大竹さんが作曲した作品だ。大竹さんのCD「くもりのない明日へ」に入っており、そこではピアノの永田雅代さんが伴奏されている。大竹さんの優しいメロディと、永田さんの和音をとても大切に演奏されている録音に感動して、去年、この曲をギターで一緒に演奏させて欲しいと大竹さんにお願いした。そして新たにつくるからには、私は大好きなオリジナルとは別の「サマー・ヴァレンタイン」を作っていこう、と思った。

私の「サマー・ヴァレンタイン」は、「海」のイメージだった。

ボサノヴァ調のコードとリズムで伴奏し、イントロでは以前大竹さんが「浪漫」という言葉を使っていたことから米米クラブの「浪漫飛行」のベースの動きから低音の流れを作った(ちなみにこの曲は沖縄のCMに使われていた)。

ソロでは「好きなことをしていい」と言われたので、気泡を含んでレース編みのように白く泡立った波をハーモニクスで、大西洋じゃない「日本の海」のイメージを親指の上下運動によるメロディで、深い海鳴りを親指と人差し指を交互に使う和音で、次第に盛り上がっていく波をラスゲアードで表現した。

そしてこれはヴァレンタインだから、ハーモニカとの最後の掛け合いで自分が好きだったミニー・リパートンの“Lovin you“を少しだけ入れさせてもらった。入れながら、もしこの小さなモチーフに気がついてくれる人がいたら、私はその人のことを好きになるかも!とかドキドキ思ったりした。今のところ気づいてくれた人はいないので、自分で報告しておく。そんなふうにしてアレンジした。

録音が完成し、1年経った今年7月、ほんまちゃんが動画を作成して送ってくれた。データを開いて、ええっそうなの!?と思った。彼女の動画は全然「海」のイメージじゃなかったからだ。男の子と女の子がいて、ラスゲアードで表現した私の高い波は、「雨」になって上から降っていた。そうか、彼女にとっての「サマー・ヴァレンタイン」はこのイメージだったんだ、と思った。同じ音を聴いていても、同じイメージを受けとるわけではない。他人がいてくれることではじめて生みだされる「違い」。面白いな、と思った。そして、曲の一番最後にくるギターのハーモニクス音のところで涙に青の色が入ることに感動、脱帽した。素晴らしいアイデアだ、と思った。

実は、この曲を一緒に演奏させて欲しいとお願いした時、大竹さんから、この曲は8月14日がお誕生日だった大竹さんの親友のために書かれた作品であることを教えてもらっていた。そして、そのご親友はすでにお亡くなりになったこと、だから大竹さんにとってこの曲はレクイエムのような曲になっていることも教えていただいた。オリジナルのCDでこの曲がものすごく特別に感じたのはそういうこともあったからなのかもしれない 。それは、大竹さんにしか演奏できない「サマー・ヴァレンタイン」だった。その大切な曲をアレンジさせていただいたことに、改めて感謝する。

ということで、今回私たち3人がつくった「サマー・ヴァレンタイン」はそれぞれ同じではない。もちろんこの話は3人とも知っているけれど、それでも少しずつ受け止め方が違う。お互い違うことは知っていて、それを一つの作品にした。おそらくこの動画を観る(聴く)人も、私達とはまた違ったイメージを持たれるのだと思う。そうやって「サマー・ヴァレンタイン」のイメージは広がっていく。それは、素敵なことかもしれない。

「Summer Valentine」動画  
https://www.youtube.com/watch?v=hujKzvrCTag

ほんまちひろHP:
https://chihirohomma.com/

大竹英二HP:
http://harmonica.jyoukamachi.com/